…「月姫…何で…まだ話したいことあったのに…」
「帝様…月姫のことは、もうお忘れになって下さい。」
「月姫を忘れる…?そんな事、出来るわけないだろう!」
「…帝様は、大切なお方です。もうお帰りになった方が…」
「…そうする…」

月姫…

俺は、無意識のうちに月姫と出会った場所に来ていた。

「こ、これは⁉︎」

前とは、違う景色…どういうことだ?

「月姫…?」

文が、置いてある…

【青葉へ
青葉に会ってしまうと、離れるのが余計に辛くなってしまうから…
黙って行ってしまう事をお許し下さい。青葉…愛しています。
あなたと過ごした時間はほんの少しだったけど、私は一生分の幸せをもらった気持ちです。
この場所は、私の大好きな場所。
大切な場所。
この場所がいつまでも残っているといいな。生まれ変われたら、その場所に行って青葉に会えたら…


青葉…私の事は、忘れて下さい。
でも、もし生まれ変われたら私を思い出して下さい。
約束だからね。

青葉の幸せを1番に祈っています。

月姫】

「忘れられるわけないだろ…月姫…愛してる。」

俺は、その日1日中泣いていた。



それから月日は流れ…

俺は、婚姻を結んだ。
月姫に少しだけ、似ている。

だが、月姫にかなうわけが無い。

俺は月姫を忘れた日などなかった。

月姫を思い出しては、月を見ていた。






…「ごめんね。青葉…」
「月姫のせいじゃない。どうしようもなかったんだから。」
「うん…次は、私の事を話すね…」



…私は、月の服を身につけた。

思い出が全て消えていく…

でも、私は悲しくなかった。
なぜなら…
その服を身につけたら、
感情さえなくなるから…。

感情や、記憶がなくなっても…
服を脱ぎ、地球の服を身につければ全て戻る。
それは知っていたけど…
私は、全て戻らない事を選んだ。


全て戻るということは、
悲しさや、苦しさも戻るってこと。


きっと、辛い思いもしたと思う。
だから怖かった。

10年に1度、陽姫という姫と会った。
けど、楽しくもなかったし…
何とも思わなかった。


…「月姫も辛かったんだな。」
「ううん。感情がなかったから辛くなかったんだ。」
「そっか。」
「でも、本当に生まれ変わってまた会えるなんて…嬉しい。」
「俺も。思い出せて良かった。見つけられて良かった。」
あれ…
「あー!」
「どうした?」
「夜が…明けてきてる。」
「本当だ…」
「怒られるー…」
「俺も…」
「…ま、いっか。」
「だな。」
「そういえば…」
「?」
「陽姫は?」
「それが…俺の妹みたいなんだ…」
「えー!すごい!」
「運命だな。」
「そうだね!」


やっと…やっと
青葉と結ばれるんだ。

今度こそは、きっと。