次の日…

「おじい様…おばあ様…みんな…」
「一緒に、来て欲しい所があります。」

「うむ。みなで行くとしよう。」

おじい様は、普段通りに接してくれてるけど…
おばあ様は今にも泣き出しそうな顔をして、うつむいている。


みんなも、(みんなというのは、私たちに使えてくれる使用人たち。もちろん、じいやもその1人。)明らかに元気がないのが分かる。




「「ここです。」」

私たちが最後の場所に決めた場所…
それは、もちろん。
陽姫と行った、月と太陽が綺麗に見える場所。

みんな、あまりの綺麗さに驚いているようです。

「もうすぐ、迎えが来てしまいます。」

ここを選んだ理由の1つは…
青葉に会わないため。
きっと青葉は私の屋敷に来るでしょうから。

「月姫。陽姫。迎えが来たとしても、私たちがすぐそばにいるんだ。帰らせはせん!」

そうだ、そうだ。とみなが口々に言う。
でも…

「嬉しいですが…」
私の言葉はとぎれた。


『うっ!!』

急に辺りが光出した。

懐かしい光…

でも、みんなには眩しすぎたようで、目を開けられないでいます。

“お迎えにあがりました。”

あれ…体が動かせない。

気持ちに反して体はすーっと動く。
…どういうこと⁉︎
体が言うことをきかない!

ん?…陽姫は?
私たち、違う所に帰るの?

「待って!私と陽姫は、この先別々で生きていくの?」

“はい…それぞれの国へ帰るわけですから。”

「そんな…」

“ですが、10年に1度。
月と太陽はそろって宴をします。
その時に会えるでしょう。”

「良かった…」

だったら…もしかして!

「またみんなにも会えるの?」

“みんな…というのは、地球人ですか?もう、地球人と関わる事は禁じられています。もし、会えるとすれば来世でしょうね。”

「…帰り…たくない。」

“それは、無理です。それに、悲しみだって、忘れられます。月へ帰ったら記憶は消えるのですから。…もう、時間です。行きましょう。”

え…待って…体が勝手に…

嫌だ…

気が遠くなって…

おじい様たちが呼んでるのがうっすら聞こえる。

「月姫!」

この…声…愛しい声…
あおば…?
‼︎
青葉‼︎

「青葉!どうして⁉︎」

「こっちの方が光ってたから…じゃなくて!行くな!」

「ごめんね…青葉…」

「そんな!お願いです!連れて行かないで下さい!」

“…行きましょう。”

「…青葉。生まれ変わったら!次は結ばれようね…」



私は気を失った。







「月姫…」

「う…陽姫?」
「うん。私たちも、お別れみたい…」
「え?ここは?」
「月と太陽の分かれ道の所。」
「陽…姫…。私、嫌だ。もうすぐ、全部忘れてしまうなんて。」
「うん。私もだよ。」
「陽姫…ありがとう。いままで、楽しかった。」
「月姫…大好き…じゃあね。」
「待って!」



…“着きました。月姫様。こちらにお着替え下さい。これを身につければ、記憶もすべて消え、誠の姫となるのです。”

「身につけなければならないの?」

“はい。”

「…分かった。」



ー地球ー

「うっ…うう…」
「もう泣くんじゃない。」
「だって…月姫…うう…陽姫」
「…」
「俺は…何も出来なかった…」
「帝様のせいではございません。」
「いや…俺が…」

フワ…

「…桜?と…雪?」
「季節の違う桜と雪がどうして…」
「月姫…」
「陽姫…」

月姫と陽姫が残した、季節のが違い、決して交わることのない桜と雪は…
一晩中…人の心を癒すように舞った。

そして…空には月だけが輝いていた。