奏「ん、ちょっと酷い打撲で力が入らないんだよね。毎日階段から落ちてるから痛みが蓄積してると言うか……」
そう、奏の怪我は基本的に打撲が多い。
見えるところでもいくつもの痣が出来ている。
しかし、それが本当に階段から落下して出来たものかというと明らかに違う。
絢「階段から、ねぇ?」
スッと目を細め、奏を射殺さんというように見据える絢乃にビクッと身体が跳ねる。
絢「お前ね、下手な嘘は怒られるだけなんだから正直に白状(ゲロ)っちゃいなさい。」
奏の反応にやっぱりなと呆れながらも促すと、その横でモソモソとお菓子を頬張る孝臣が『おお』とやる気の無い声を出す。
孝「絢乃、何か刑事さんみたい。」
絢「オーミ?お前も怒られるだけなんだから黙ってなさい?」
孝「ん、ごめん、ね?」
お菓子をくわえながらもコテンと首を傾げる孝臣に絢乃も諦める。
絢「オミ、謝るか菓子を食うかどっちかにしような?ほら、カナ。どーぞ?」
存外に話せと言う絢乃に奏は諦める。
奏「………階段から落ちたのも本当。でも、殆どは色んな人達に殴られたりしてる。」
絢「どこで?オミやちーちゃんやたまえは?」
奏「私が一人になる場所で。トイレとか、部室に行くときとか。」
絢「部室?アレ?カナって何か部活入ってた?」
本当に何だっけ?というように首を傾げる絢乃に苦笑する。
奏「入ってますよ?写真部。でも、最近はあまりカメラも構えられてないのよね。」
本当に残念そうにため息を吐く奏に絢乃は同情する。
絢「俺の写真集辺りからだもんな。本当、悪いなカナ。」
奏「やだ!絢ちゃんが謝ること無いんだよ?私、今回の事は誰のせいなんて思ってないもん!それにね?後輩の子で、噂を真に受けなかった子がいるんだ!同じ写真部の一年の男の子なんだけど、いつも心配してくれるの!」
ニコニコと奏が笑うから絢乃は一安心。
絢「そっか。全員が全員、馬鹿じゃ無かったんだな。」
よしよしと頭を撫でると彼女は気持ち良さそうに目を閉じてしまう。
心なしかうつらうつらとしてるような……
絢「Σあっ!お前、寝てないんだろ!?ιちょっとこっち来い!」
奏「Σふぇっ!?ι絢ちゃん!?ι///」
くいっと奏を抱き上げリビングを出る。
孝臣も二人に付いていく。その手にはお菓子を抱えながらだが。


