――――――――――――
――――――――――
―――――――
孝「ん。」
裏門に到着すると孝臣は唐突に右手を伸に差し出す。
伸「? 何だ?小遣いならやらねぇぞ。」
首を傾げる伸に孝臣は無表情で『違う』と首を振る。
孝「伸さん、分かってて聞く?」
すると伸はため息と共にポケットから一つの茶封筒を取り出す。
伸「お目当ては、これか?」
孝臣は無言で頷き受け取ると早速、中を確認し始めた。
伸「………それを見て、お前は俺を軽蔑するかな。」
孝「………………なにこれ。真実な訳?」
眉間に皺を寄せ、孝臣は伸を見上げる。
伸「………まぁ、大体な。アイツは知らねぇが、確かに彼らを追い詰め自殺に追いやったのは……
俺なんだよ。」
苦し気な顔で伸は言うから、孝臣は彼を責められなかった。
孝「後悔、してるの?」
ふるふると首を振る。
伸「誰に何を言われようと、アイツらを死に追いやったのは後悔してねぇ。それだけのことをやってたんだからな。
だけど、子供が居るなんて知らなかった。知っていたら……俺だって、な。」
彼の言葉に嘘は無さそうだと孝臣は思う。この10年、奏と共にいた彼を見てきたのだ。彼の優しさは知っている。
孝「……二年前、奏から離れたのはこれが関係あるの?」
伸「………ある、と言えばある。ないと言えばない。」
孝「どっち?」
呆れたように伸を見ると、彼も微妙な顔だ。
伸「あの頃は奏が急に離れていくような気がしていた。それが怖くて、俺から手を離した。傷付きたくなかった。臆病なんだよ、俺。」
孝「離れる、ね。奏は伸さんから離れるなんて想像できないけど、今も怖いの?」


