伸「………さて、俺も帰るな。“一応”無事みたいだし、後の事は智也が居れば何か安心みたいだし。」
スッと立ち上がり伸がそう言うと奏は申し訳ない顔で彼を見た。
奏「仕事、忙しかったんじゃない?ごめんね?私の事でここまで来てもらっちゃって。」
伸「あ?それは別に構わないけど、つか、俺はまだお前の保護者だからな。知らない方が問題だ。」
気にするなと頭をワシャワシャと撫でられた奏。
奏「Σわっ!ちょっと、智くんといい伸ちゃんといい私は犬猫じゃないんだよ?ιι」
伸「ん?あぁ悪い。癖だ。」
口では謝るも悪びれた様子もなく伸の手は離れていく。
伸「…………それと、奏。これ、渡しておく。」
奏「? 何?」
差し出したのは1枚のメモ帳。
伸「俺の今のケー番。何かあれば………いや、何もなくても電話してきていいから。」
奏「Σあ、有難う伸ちゃん!!///」
本当に嬉しそうにメモ帳を胸にあてお礼を言う奏に伸は何故か複雑そうだ。
伸「じゃあ、俺ももう行くな。孝臣、あとお前らも。奏の事…頼むわ。」
頭を下げる伸に三人は驚く。が、しっかりと頷いた。
孝「ん、俺、伸さんを裏門まで送る。奏と神崎は千尋に女子寮まで送ってもらって。」
千・た「Σハァ!?ιアンタ/君が!?ι」
孝臣はそう言うと伸の背中を押して部屋を出ていった。
伸「えっ、ちよっ、孝臣!?ι」
孝「行ってきまーす。」
パタン
千「………孝臣が、あの孝臣が自分から伸さんを送るなんて……」
た「奏から離れるなんて出来たのあの子?ι」
普段から奏にベッタリの彼が信頼しているとはいえ、他の人間に奏を任せるなど有り得ないとばかりに驚愕する千尋とたまえ。
奏「………二人共、臣くんの事どう見てるの?ι」
た「奏バカ?」
千「おんぶお化け?」
奏「……アハハ…ι
二人共、伸ちゃんの話でまだ分からないことあるでしょ?臣くんはそれを確認する為に伸ちゃんを送って行ったんじゃないかな?」
千尋とたまえは僅かに首を傾げると千尋が何かに気が付く。
千「あ、もしかして手紙?」
た「手紙?あぁ、伸さんに個人的に来たやつ?」
奏はそれに頷く。
奏「伸ちゃんがさっきそれの内容を私達の前で言わなかったのは多分、私が居たから。つまりあまり私に聞かせたくない内容だって事。臣くんはそれに気付いて二人っきりでそれを問い詰めるつもりだろうね。」
普段の天然とはかけ離れスラスラと推理する彼女に呆然としたが、やはり幼馴染み。それくらいお見通しという事なのだろう。
奏「……心配してくれるのは嬉しいけど、私に隠し事しないでくれたらいいのになぁ。」
少し哀しげな彼女の呟きは誰に聞かれることなく消えていった。


