伸「……注意力散漫。つか、どうしてこんな小さな段差に躓くよ。」
そう言われ、足下を見てみると本当の本当に小さな段差があり、どうやら私はこれに躓いたようだ。
奏「あ、ありがとう伸ちゃん。…ハァ…ハァ…ハァ…あはは、カメラで息を乱すなんて、ハァ…初めて…」
伸ちゃんを見上げ言うと伸ちゃんは僅かに眉を寄せ私の手元を見ている。
伸「少し休憩しろ。」
奏「えっ?何で?」
首を傾げると伸ちゃんは私の手に触れてカメラから私の指を引き剥がす。
それにより気付いた。私の手はまるで硬直したようにカメラをギュッと掴んで離さないのだ。
伸「集中し過ぎて指、離れなくなるぞ。」
奏「ハァ…ハァ…えっ…何で?ιこんなこと…ハァ…今まで、無かった…」
不思議に思いながらカメラを掴んでいた手を見詰めていると、綺麗な、しかしちゃんと男の人だと分かる手が私の手を包んだ。
絢「カナ、大丈夫か?手が冷たいぞ?」
奏「絢ちゃん…うん、大丈夫。ごめんね?いい流れで撮れていたのに集中乱しちゃった。」
申し訳無くてシュンとしていると頭を撫でられた。


