パシャ
パシャ
伸「はいっ、じゃあ視線はこっちに!体勢は変えてくれるか?……そー!良いよそのままなぁ。」
パシャ
伸ちゃんがシャッターを切るたびに斉藤さんは少しずつ表情を変え、体勢を変え、伸ちゃんの要望に応えていく。
奏「(これが伸ちゃんの今の仕事…あの頃と違って楽しそうね。)
…良かった。伸ちゃん楽しそうで。二年前出ていった甲斐があるじゃない。」
孝「……よく、笑えるね。俺が思っていたより奏は強かったか。」
隣の臣くんがポツリとそう言う声が聞こえ見上げると無表情だが、優しく頭を撫でてくれる。
奏「強く、か。ふふっ、結構ね?無理してるんだよこれでもさ。」
ピタリと頭を撫でる手が止まり臣くんはじっと私を見詰める。
奏「さっきはね?伸ちゃんにちょっとムカついて思わず昔の調子で喧嘩吹っ掛けて…
ふふっ、よくもまぁあんな戸惑いもなく話せたよね。」
実際、今は手が僅かに震えている。今更になって恐怖心が出てきたようだ。
だけど、二年ぶりの再会で喧嘩吹っ掛けて、今もこうして彼の背中を見詰めていられるのはきっと…