伸side


キィッと小さく扉の開いた音がしたが振り向かない。


何となくだが誰が入ってきたのか分かる。


懐かしい、忘れられない気配。二年前と少しも変わらない優しい彼女の…


伸「何だよ。盗み見か奏?」


奏「…よく、わかったね?振り向いてないのに。
見ていたいの。ダメ、かな?」


引く気無いくせに…


声は窺うようだが、きっとダメだと言っても聞きはしないのだろう。


伸「……聞きゃあしねーだろうが。勝手にしろ。」


奏「うん!ありがと伸ちゃん!」


伸「……っ…!」


素直な奏の声に息が詰まる。


何で、こいつからは負の感情を感じない?あんな酷い捨てかたをした俺に何故笑いかけれる!?


伸(分からねぇ。奏、お前は何を考えてここにいる?)


目線を一切、奏に向けずファインダーをもう一度覗き込む。


そうしてシャッターを切っていった。