千「おーい奏、大丈夫?混乱してない?」


絢「するだろ。オミの説明、アッサリし過ぎて俺達だってビックリだ。(おまけに嘘つきだし。)」


智「たく、コイツのマイペースな所は長所なのか短所なのか……ι」


そんな中、たまえはコッソリと千尋に近付く。


た「ちーちゃんやちーちゃんや(コソッ)。」


千「ん?何かなたまちゃん(コソッ)。」


た「伸さんって誰なの?」


たまえがそう聞くと、一瞬キョトンとしてポンッと手を打つ。


千「あっそっかぁ。たまえは知らないよね。僕らとは高等部からの付き合いだし。」


それにムッとして千尋を睨む。


た「そーよ。だから、アンタ達の話に付いていけてないの。伸さんって誰なの?何で奏にその人が帰ってきたとすぐに教えてあげなかったの?春は何で怒ってんのよ!?」


矢継ぎ早に質問するたまえに少々困ったように笑う。


たまえの疑問は尤もなもので、しかしそれを話すには奏の過去も関係している。


千尋は中等部の頃からこの五人と仲良くさせてもらっているが、彼女の過去を聞いたのは海堂 伸が彼女の元から去ったとき。


つまり彼らは彼女自身が話さない限りあまり他人に語っていい話では無いのだと考えているし千尋自身も思っているのだ。


奏「あ、の、ごめん。いきなり過ぎて頭付いていけない。つまり、伸ちゃんは帰ってきた、んだよね?」


たまえと千尋の話は奏には聴こえていなかったようで孝臣に再度確認する。


孝「うん。」


奏「………って事は」


パタパタ


ガチャン!


智「Σ奏!?ι」


突然、部屋を飛び出し玄関を出ていった奏に驚き、慌てて智也も追い掛ける。


春「出てっちゃった。あそこに行くのか?」


孝「そうなんじゃないかな?まぁ、居るとは思わないけど。」


ガチャンとドアが閉まる音を聴きながら、奏と智也と違い、至って冷静にそれを見送る。


千「孝臣はともかく、春と絢之が見送るなんて珍しい。」


絢「行く場所は分かってる。あの野郎が奏に会う気もないのもな。行ったところでアイツを殴れないなら俺は行かない。」


春「それに、まぁ孝臣のいう通り俺達にあの人を殴る権利無いもん。あるのは奏だけだし。」


た「ねぇ~?だから、一体アンタ達の言っているその海堂 伸って何なのよ!?」


たまえの叫びに答えるものはいなかった。