四つ葉のクローバー 幸福は誰の手に



春『……っ……みな…!』


断片的に聴こえた春彦の声はひどく焦っていた。


急いで二人は化学室に飛び込むと家庭科室と同じように準備室があり、そこの扉が開かれている。


反射的にそこに向かうと丁度奏が窓に飛び乗りこちらを振り返ったところだった。


孝「奏!!」


孝臣が叫ぶ隣で千尋は部屋を見渡す。すると目につくのは倒れた桜野とその横でへたりこむたまえ。そして二人の前で愕然としたように立ちすくむ春彦。床にはビーカーやらフラスコやら試験管やらと散乱して割れている。


そんな状態を確認していたら、『チッ…』と不快げに舌打ちをした奏に気付く。見ると彼女は孝臣を睨んでいた。


奏「遅ぇんだよタコ。俺との約束破りやがって。お前らじゃあコイツは護れねぇのかよ孝臣。本当、幻滅したぜ。俺がいなきゃそこのガキにレイプされてたぞ。」


それに千尋は目を剥く。内容にではない。いや、内容も乱れた制服も許せるものではないが、驚くべきはそこではない。


今、奏は『俺』と言ったか?『孝臣』と言ったか?こんな乱暴な口調が今まで一度でもあったか?


混乱する千尋に奏は目をやると、『チッ…ウゼェな。』と悪態をつく。


奏「宮下 千尋、そういえばお前とも“初めまして”か?だが、一々説明するのは面倒だ。俺の事はそこの役立たずの男どもに聞け。俺は行くぜ。」


クイッと親指で指差したのは孝臣と春彦。


春「…だ……って…」


孝「……湊人(ミナト)……お前」


奏はフッと笑い、上体をそのまま後ろに倒す。


た「Σか、奏!?ι」


千「Σちょっ!嘘!?ι」


現在、三階の教室にいる筈。なのに彼女は戸惑いも躊躇もなく落ちていった。


慌てて窓枠に近付くと頭から落ちていった奏は、しかし地面にぶつかる前に身体を捻り、危なげ無く足から着地した。


春「……おい孝臣。」


孝「ん?」


たまえと千尋の後ろから孝臣と春彦もそれを見送ると、やや間をあけ春彦が孝臣に声をかけた。


春「…………ピンクだぜ。」


孝「…………春、最低だ。」


ピンクが何を指しているかは敢えて記さないでおこう。


春「いや、だって奏なら白パn…」


ゴンッ


春「いっってぇぇぇ!?ι」


孝「だからこんなときに何言ってんの?ホント最低。それより追うよ。」


尚も言い募ろうとする春彦の頭を殴り、孝臣は踵を返す。


た「待ってよ孝臣!今の何!?奏が言ってたのはどうゆう事なのよ!?」


しかしたまえが孝臣の腕を掴み、怒鳴るように問うと目を瞬く。


孝「あ~…それは智也に聞いてよ。俺達はとにかく湊人を追うから。」


千「ミナト?」


千尋の疑問に答えず孝臣は腕を振り解き部屋を出ていく。


それを春彦も追っていく。