奏「あの写真を貴方が!?じゃあ絢ちゃんの事務所にあれを送ったのも貴方!?
何であの写真を?あれのせいで絢ちゃんは今は自宅謹慎になってるんだよ!?」
桜「ああそれが狙いだよ。本当ならアンタの幼馴染みや親友もあれを見て誤解してアンタを苛めて欲しかったけど、まぁ流石はってとこだよね?苛めるどころか監視カメラで苛めの証拠を撮るし、危なくなれば身体を張って守ってたでしょ。」
奏「何が目的なの?」
桜「目的?ん~…ほら子供って好きな子を苛めちゃうでしょ?僕もさ先輩の今みたいに泣きそうなその顔に何だかとっても興奮するんだよね。」
クンクンと首筋に鼻を近付け奏の匂いを嗅ぐ。
奏「ヒッ…やだ…」
それに震えると満足そうに笑いベロリと舐められる。
奏「…ッ…や…臣くん……臣くん……臣くん……」
必死に孝臣を呼ぶが当然、彼が現れる筈も無い。
桜「………そういえば先輩の事を引き取ったあの海堂 伸だけど、彼も随分と偽善者だよね。」
奏「伸、ちゃん?何で桜野くんが伸ちゃんを知ってるの?」
訝しげに眉を寄せる奏に微笑み、頬を撫でる。
桜「先輩の事なら何でも知ってるよ?だって僕、欲しいものの事は全部調べるから。だから海堂の事も調べた。先輩は知ってた?海堂の会社が先輩の両親の会社を倒産させて自殺に追い込んだんだよ。」
それに目を見開く。だって奏は知らない。
奏が物心がつく頃には両親は忙しく、幼馴染みの家を転々と泊まる生活だった。五歳の頃に両親は亡くなり、葬式に来ていた両親の知り合いという伸に皆と離れたくなければ一緒に住まないかと誘われ自分はその手を取ったのだ。
奏「伸、ちゃんが…パパとママ、を…?」
桜「やぁっぱり話されてないんだ。海堂も先輩の両親の死を後悔して先輩を引き取ったのかもね。でもそれって残酷なことじゃない?どんな理由があろうと肉親を殺した奴と寝食共にしていたなんて僕だったら許せないよ。」
ハハッと嘲笑う桜野に奏が声を荒げる。
奏「貴方に…貴方に…伸ちゃんの何がわかるの!?伸ちゃんが本当に私の両親を自殺に追い込んだとしても、それを悔いて私を引き取ったとしても!貴方に何がわかるのよ!?それがどれだけ苦しいと思う?どれだけ辛いことだと?人の過去を面白半分で荒らして、貴方は何がしたいのよ!?」
ハァハァと肩で息をする。普段から声を荒げるなんて事をしない奏は疲れているようだ。
桜「……絶望。」
奏「……絶望?」
にぃと嫌な笑みを浮かべる桜野に奏はビクリと震える。
桜「大好きな先輩の絶望に歪んだ顔を見てみたいんですよ。」
そう言うと桜野は奏の制服に手をかける。その眼は狂ったように血走っていた。
奏「やっ!止めて!嫌だ!離して!離してよ!」
ブツン!
大きくワイシャツのボタンが弾ける。
その時、奏の頭の中で声がした気がした。
『あ~あ。孝臣も智也も春彦も絢之も頼りねぇな。千尋もたまえも期待してたけど、こりゃ無理か。本当、奏の事護れないなら…』
?「オレがやるしかねぇだろ。なぁ、ガキ?」
桜野の下で妖しく笑うその女に彼は気付かなかった。


