そんなことを話していると学園の昇降口に着く。相変わらずの奏の下駄箱はスルーして階段を上がって行くと廊下から既に生徒達の困惑した声が聞こえた。
千「智也が朝からテレビに今までの記録を流してやるって息巻いてたよね。アハハ、自分達のやってたことを今になって否定してるよ。阿呆だね~。」
千尋はまるで汚いものを見るように嘲笑う。
た「ねぇ、これってさ私達が教室入ったら危なくない?」
教室から聞こえる『なんだこれは!』『こんなのいつ録ったのよ!?』『犯人は日暮だ!間違いねぇ!』という言葉の数々にこのまま奏を教室に入れるのは危険だとたまえは判断する。
孝「ん、千尋。今何時?」
千「今は…7時50分だね。」
腕時計を確認して千尋は唸る。
千「体育館に集まるのは8時30分。準備は智也と春がやってくれてるから、僕らどうする?」
孝「40分、暇だし、屋上で寝る?ふわぁ…」
孝臣は眠そうに目元を擦り奏に後ろから抱き付く。
奏「うわっと、と、臣くん重いよ~ιι」
のし掛かる孝臣にたたらを踏むも苦笑するだけの奏。
た「こら孝臣、奏は怪我酷いんだから少しは気を付けてあげなよ!
(痛むだろうに笑うだけで文句一つ言わないのよね奏は。この子が怒ったらどんな感じなのかな?ι)」
怖いもの見たさであるがこうなると見てみたいものだ。
?「日暮せんぱーい!」
奏を呼ぶ声に振り返ると、たまえ以外は見覚えのある男子生徒が駆けてきた。
奏「あれ?桜野くん?」
桜「日暮先輩、おはようございます!どうしたんですかこれ?全部の教室に流れてますよね?」
桜野 悠太。写真部での奏の後輩。唯一噂を真に受けず奏の味方をしたらしい。
孝「奏、彼は?」
絢乃から話を聞いているため知っているのだが、それを奏には教えていないし事実、桜野とはこれが初対面。こう聞くのが妥当だろう。
奏「あ、皆は面識無いもんね。彼が昨日話した後輩の桜野 悠太くん。桜野くん、こっちは私の…」
桜「知ってますよ。先輩の親友の神崎 たまえ先輩に先輩の幼馴染みの赤木 孝臣先輩とその親友の宮下 千尋先輩ですよね?先輩方は有名ですから。」
律儀に頭を下げる桜野に何も知らないたまえは好感を持つ。
た「あら良い子じゃん!何?アンタは奏の味方?」
桜「はい、勿論です!だって日暮先輩が誰かをたぶらかすなんて出来ないでしょ?」
ニッコリと害のない笑みで言い切る彼は本当に奏を信じているようだ。
………ただ、あくまでも表面上だ。こちらが信頼するには早すぎるし、何より写真のことがどうしても引っ掛かる。


