「あ、飛鳥さん」

真っ赤な顔でジタバタする薫子。

それでもオレは薫子を離したくないと思ってしまう。


「このまま、どこかに行ってしまおうか?」

「・・・え?」

思いもよらない言葉に、薫子は目を丸くし、

俺を見上げている。ジタバタするのも止めてしまった。


本当に思うんだ。

薫子とこうやっていられるなら、

会社を、社員達を放っておいてでも、

君との時間を大切にしていたいと。


「・・・飛鳥さんは、会社の社長ですよね?」

「・・・」


「飛鳥さんは西条株式会社にとって、なくてはならない

とても大切な人なんですよ・・・

そんな事、言わないでください」

そう言った薫子は何時ものほんわかした感じじゃなかった。

凜として、綺麗な素敵な女性に見えた。



「ちょっと、言ってみただけだ」

「・・・そうですか?それならいいですけど。

早いですけど、朝食の準備をしますね?

社長さんなんですから、同じスーツで出社は出来ませよね?

出来たら呼びますから」


そう言った薫子は、立ち上がり、キッチンに消えた。