シュシュ

「・・・何?」

優しい口調でもう一度問いかけると。

薫子はやっと口を開いた。


「お夕飯、もう食べました?」

「…いや、さっきまで会社にいたからな。

会合も会議室だったから何も食べてない」



「…じゃあ、お詫びと言ってはなんですが。

お夕飯、食べていきませんか?大したものは

用意できませんが」


「・・・」


「あ!…嫌ならいいんです。出過ぎたことを「いや」」


言い終わらないうちに、薫子の言葉を遮った。

「・・・飛鳥さん?」

「・・・いただくよ。この時間じゃもう、どこも閉まってるしな」


…只今の時間、午後11時。


「じゃあ、そこに座っててください!

急いで用意してきますから」

そう言ったかと思うと、嬉しそうな顔をして、

薫子はそそくさと、キッチンに姿を消した。

…女性の自宅で、手作りのご飯を食べるのは、

初めてなのだ。なんだか気恥ずかしくなる。


今まで、食事と言えば、必ず外で済ませていたから。