シュシュ

「もう少しだけこうしていたい」

ささやかな願いなのだが、

薫子には、刺激が強すぎるだろうか?



「…あと5分」

「・・え?」


「あと5分だけ…ですよ」

そう言ってはにかんだ薫子の顔に、

胸がキュンとなる。

…全く、自分が可愛い事を自覚していないから、

困った小悪魔だ、と、思わずにいられなかった。


…それから、本当に5分後。


薫子は逃げるように、俺から体を離し、一歩後退した。


「約束の5分です」

「・・・わかってる。薫子の天敵はもういないみたいだから、

俺はそろそろ帰るよ」


「・・・あの!」

立ち上がったオレのスーツの裾を、グッと掴んだ薫子。


「どうした?」

その意味が分からなくて問いかける。

黙り込んだまま何も言わない薫子。

俺は薫子に向き直って、目線を合わせる為、再びしゃがみ込んだ。