…車に乗る前に、チラッと見えた、

西条と薫子のシルエット・・・

それがオレの心をキュッと締め付けた。

寄り添う二人があまりに幸せそうだったから。

…本当は、オレがこの手で、薫子を幸せにしてやりたかった。

…全く、未練タラタラじゃねえか。情けない。



「おい、東吾、行くぞ」

「あ、あぁ」


…必ず、幸せにしてもらえよ、薫子。


…俺は運転席に座った。

そしていつもより少し、荒い運転をする。



「俺を殺す気か、東吾?!」

後部座席で龍之介が叫ぶ。


「まぁ、まぁ、たまにはいいじゃん」

オレは笑いながら、ハンドルを操作した。

・・・明日からは、いつも通りのオレに戻るよ。


「ったく、・・・」

後ろから溜息をつく龍之介の息遣いが聞こえた。