待ち合わせ場所は某ホテルの喫茶店。

時間10分前にもかかわらず、水野さんはもう先に来ていた。

「遅れてすみません」

私は、丁寧に頭を下げた。


「何を言ってるんですか?まだ約束時間の10分前ですよ。

私が早く来過ぎただけですから、謝らないでください。

…それより、本当に、お母様と兄さんが一緒なんですね」


そう言って、複雑な笑顔を見せた水野さん。


「…ええ、勝手に付いてきただけですから、

お気になさらず」

龍之介は澄ました顔で言い放った。


「ごめんなさいねぇ。貴方の顔を一度、拝見して見たくて、

無理を言って付いてきたの」

お母様はそう言って軽く頭を下げた。


「いいえ、元々、お見合いの申し込みでしたので、

返っていてくださる方が、話しやすい事もありますし」

水野さんお得意の営業スマイル?

女はイチコロらしいが、私は何とも思わない。


「…水野さん、いきなりですが、本題に入りたいと思いますが、

よろしいですか?」

真剣な表情で問いかける。