「…ほっとけぇ。」


私はしょっちゅう、心配してくれてる彼女に
こうして突っぱねてしまう。

嫌な癖
直すべき癖


それでも毎回彼女は呆れずに

私を選んでくれる。



「はいはい。ほっとくけど、つぎ小テストだからね。ほっとくけど。」

「…………。」



まあ、たまにこう弱いところをつかれるので

お互い様かな、とかね。



思ってるわけで…




「…わかった!私の負けだよ!!」

「なんのはなしぃ~?……ふふっ」

「性格悪いな!ほんと!!」



誰かさんには負けますよ、と捨て台詞をはいて

彼女は教室を去った




そんないつも通りの午後

高校3年生の

私、紅嶋 真珠(コウシマ マリ)の話。










*****







小説が好きだった。


12歳の冬、買ってもらった一冊の小説



クリスマスのはなし。

主人公はお金好きの他人に厳しいおじいさん
店の従業員の家庭も無視して自分のお金に没頭し
一人でいいと人生を損していた。

そんなおじいさんがクリスマスの夜
とても怖い夢をみる

自分がしたことでみんなが困っていたこと
怒っていたこと、悲しんでいたこと

そんな自分のわがままのせいで
死んでしまう人がいるかもしれないということ

今のままでは自分が死んだとき
だれも悲しんでくれず
彼は本当の意味でひとりっきりになってしまう


そこで彼は改心し、
ハッピーエンドを迎える


そんな話。



初めて読んだとき、私はなぜか泣いていたのを覚えている。