「今ね、あそこに行ってきたんだ!」

「・・・好きだね、あそこ。」

「だって大切な場所だもん。」

そう言って更に笑顔になる。

彼女の言っている"あそこ"とは

僕と彼女の大切な思い出の場所。

僕と桜が出会って想いを伝えあった場所。

「それで?」

会話をしながら廊下を歩く。

他の生徒の声が大きくて聞こえないから自然と距離が近くなる。

「あ、えっとね。」

付き合いだした頃は肩が触れ合うだけでドキドキしてどうしようもなかった。

だから、今のこの距離がとても僕達の長さを物語っているように思えた。