[短編]彼しかいなかった

もう、彼とは一緒にいられないね。


そう思っていても、涙は地面に落ちていく。



走り疲れて、泣き疲れて
その場で立ち止まると後ろから声がした。



「おい! 待ってって!」



なんで? なんで、あなたがここにいるの?


枯れ果てたはずの涙が溢れていた。


そう。彼があたしを追いかけていたのである。