ぁあ、そうだった、彼に私は名前も名乗らないで……とても失礼な事をしたのだ。自分は手紙で名乗らせようとしていたのに……

そう思うと、先ほどの変に胸が苦しくなるのが止まり、いつも通りになった。



「申し遅れました。私は白薔薇の白音、第二子でございます。」


頭は下げたまま、丁寧に話した。



「やはりそうでしたか………

私も申し遅れてすいませんでした、
黒薔薇の第一子、

黒夜(こくや)

と、申します。白音さん。」




黒薔薇の第一子……
と、いうことは、


「貴方は黒夢の兄様……」


がばっ!と勢いよく顔をあげた。


彼はクスリと上品に笑う、
その表情は確かに先ほど見た黒蘭さんに何処か似ていた。



「そうですよ、黒夢がお世話になりました………

そして、私も………」


そういって優しい笑みを浮かべる彼。
その笑顔を見て、白音も笑顔になった。


「文通していたのに、私は黒夜さんの名前、つい最近まで聞いていなかったなんて不思議ですね。

普通なら最初に名前を聞くのに……」


「そうですね、私も名前を聞く事すら忘れていました。

………また会えて嬉しいです白音さん。きちんと名前を言うのは照れますね。」

少し顔を赤らめる黒夜。
その姿を見て、また心臓の鼓動が早くなる。

変な自分がいる

また、自分の顔が赤くなってしまう。


「ぁ、私も、会えて嬉しかったです。……黒夜さん……

変ですね、さっきも名前を言ったのに、とても照れます。」


彼の可愛いらしい笑顔に私はどうかしているのだろうか?
こんなの普段の私ではない。


「なんだか……以前王の宮廷であった時よりもとても表情が柔らかいですね。」


ポツリと出てしまう一言。またやってしまったと、口を、手で隠す。


「そうですか、あの時は仕事の途中でしたので、ピリピリしていましたから……

それに………何故でしょうね、さっき白音さんに会ってから、なんだか胸があったかくなったんです。まるで抑えてた何かが出てきたみたいに、

会うまでは冷たい鼓動だったのに……

やはり白音さんは太陽のような方なのですね。きっと出会った方の心をあったかくするのですね。」