隣で、白音の表情を見て黒夢がクスりと微笑んだ。



「ぇえ、もう少し、怖い方だと思っていたから……

黒蘭さんは、思っていた以上に暖かい、優しい方なのだと思って。」



はっ!と口を手で押さえた。
言ってから気づく、失礼な事を言ってしまったと後悔する。
ごめんなさいと深く頭を下げると、
クスクスと上から声が聞こえてくる。


「気にしないで、白音さん。誰だってそう思うわ。

黒薔薇はとにかく…黒いイメージが強いから、

でもね、私たち黒薔薇の姫達は、少しでも心は明るくしたいの
黒薔薇の男性は、使命を受けて……
白音さんも知っての通り、裏の仕事をこなすの。

だからね、彼らの気持ちが暗い闇の奥底に落ちないように、私たちが明るくなるの。

気持ちだけね。」



そういってまた優しく微笑んだ。
美しい星空のようなロングドレスがさらりと揺れる。



「素敵な事ですね……。」

本当にすごい事だと思った。
こんなに寒くて暗い場所で、彼女達は笑顔を忘れる事なく、ただ真っ直ぐ生きている。

白音は、あんなり明るい場所で、お気楽に、暮らしていたことを考えると胸が痛くなる。

下を向いて黙り込む白音に黒夢は顔を覗かせて、


「ねぇ、兄様のところにも挨拶に行ってくれないかしら?」


「兄様……?」


下を向いていた顔をあげる。


「丁度今ね、宮廷に帰っているの。会って欲しいなと思って。」


優しい笑顔でにっこり笑う。


「会ってみたいわ。」


黒夢と同じように白音も笑顔になった。


「行ってらっしゃい黒夢。私はこれから仕事に戻らなくては………
やることがたくさんあるからね、
白音さんを案内してあげて。」



そういって、優しく微笑む黒蘭に、わかったわといって白音の手を引く黒夢。


大きなドアを開けて部屋から出て行った。