私達を殺せば……
人を殺して幸せなど得られるのだろうか?


いや、

確かに黒薔薇の使命もそうだった。



人を殺して幸せを得ていた。それが当たり前だと思ってーー
そこからがこの世界の問題だった。


彼らの狂った行動も、もともとは私達だって行っていたもの。
ただ、殺されているものと、殺しているものが反対になっただけ、

どちらも自身の幸せを願って………




「転送魔法が使えるものは使えないものを連れて逃げなさいっ!

そう長くは持たないわ!

さぁ!はやくっ!ここから脱出して!!」


しかしと慌てる騎士達。
彼らだって命を捨ててでも白薔薇の一族を守る覚悟はある。

今、この場を離れるわけにはいかない。



けれど彼女の赤い瞳はきつい目で彼らを見る。


「貴方達はここにいなくてもいいの。
怪我をしている人だっているのだから……

私には貴方達の命がすごく大事なの。だからお願い、
ここを離れて………」


優しい笑顔。
風もないのになびく美しい髪。

その表情を見て俯く兵。
中には涙を流し、怪我をした兵を担いで転送魔法で消えた兵もいた。


ピキピキと音を立てて、白音の結界にヒビが入り始め、
白音もはぁはぁと息をきらし始めた。

かなり強力な結界。
おそらく、宮廷に貼っていたものよりもはるかに強いものだろう

が、

やはりそれをかけている生身の身体への負担は激しかった。

徐々に結界の力が弱まり、ヒビが大きくなっていく。