けれど大好きな声。
大切な人。


父様、

純一は白薔薇の一族のものではない。
白薔薇の騎士の1人であり、それほど目立つ人ではなかったと言う。

ただ、母である白百合は純一の優しさや見た目ではない中身に惚れたのだ。


だから優白や、白百合、白音のように白き力は持っていなかった。


責任感の強い純一にとって白薔薇の夫となるのはどれほどのプレッシャーだったのだろうか?

決して高い身分でもなかった………


それでも純一は2人の子供を育て、プレッシャーにも負けずに頑張り続けた。


そんな彼

それが大好きな父様。



だから今見ている彼が本物なのかわからなくなる。

泥だらけで傷だらけ
目に大粒の涙をため、必死に抱きしめている。
本当に小さな父様、




「白………音………?」


純一が抱きしめていたものが目を開けた。
身体は動かないのだろうが必死に向けようとしていた。


「母様………」


そっと手を握る

いつもの綺麗な手の面影は無く、カサカサのまるで老婆のような姿だった。


胸元には小さな穴があいている。
その穴から血がたらりと流れている。


「邪悪な………力……ごめんなさい………白音………」


涙を流す白百合を見て、思わず泣きそうになる。
必死に堪えて、白百合の傷口に手を当てて回復魔法をかけた。
大丈夫、これくらいの傷なら治せる、と。




「な、んで………」



けれど、傷口はなかなか塞がらない。
邪悪な力がそれを拒んでいるのだ。

力には自信があった。

アナリバ老師にも、白薔薇一強いと褒められていたから。


それでも無理なの?


母様を救えないの?