「あとは…えーと…えーと」

探すけど、ないんだよ。特徴って言える特徴が…。どこにでもいそうなギャルだったもん。しいて挙げるとしたら…。


「あ、モノグラムの財布でした…!」

「そんなブランド物みんな使ってるだろーがよぉー」

般若のような顔でメンチを切られた。絶対にこの人は…元ヤンだ。

と、思ったら急に可愛い顔に戻って、

「あ。でも、詩音は確かにモノグラムだったかも」
と言った。

「…じゃあ、もうめんどくさいから、うちの店に来なさい!」

「え?」

桃子さんの言葉に、驚きを隠せない。


「来て見て確かめるのが一番でしょ。今日バイト休み?」

「や、休みだけど…」

「じゃあ、決まりね!今日来なよ」

「え…ええ…でも、俺…そういうお店行ったことないですし…」


「あ、ないんだー。じゃあ涼平と来ればいいじゃん」

涼平の顔を見ると、

「俺は…ご一緒してもいいですよ」
と、涼平はニッコリと微笑んでいた。

「わ…わしは?」
と、ハカセも行きたそうにこっちを見ている。


「ハカセは散々ウチの店に来たことあるじゃーん」

そうなんだ。それは初耳だ。

「それに、トラちゃんに餌あげて欲しいから、お留守番ね」

「…ぐむぅ」
と、ハカセはうな垂れた。

「じゃあ、このお金使っていいから…」
と、桃子さんは財布からお札を出し、テーブルに置いた。



「え…?なんでですか?自分で出しますよ」

「いいの。アタシが来いって言ったんだし。半ば無理やりでしょ。それに、アタシを指名してくれれば少しはアタシに返ってくるし」

そんな桃子さんは、とっても男前だった。
ちょっと格好いいと思ってしまった。

「ありがとうございます!」

俺と涼平は番長に頭を下げた。

「じゃ、アタシ…シャワー浴びて支度するから」

そう言って番長は、リビングを後にした。


テーブルの上にはお札と名刺が置かれていた。

名刺に書かれていた源氏名は、

“山咲桃子”

本名は確か山口桃子。なんで名字だけ微妙に変えたのだろう…?