ビニール袋を顔から取る。

目の前に立っていたのは、内藤とそれに襲い掛かる磯貝だった。


「―うおぉぉ」

磯貝は今度は内藤の首を絞めようとしたのだ!


「キャーーッ!」


「止めろ!止めろーー!」

俺は磯貝の腰に飛びつき、押さえようとした。
しかし、奴を止められない。

俺はその場にあったパソコンのキーボードを持ち、思いっきり奴の頭を叩いた。

―ガッ!


平たい部分で叩いても威力は小さく、キーボードの角でもう一度、思いっ切り叩いた。

―ガンッ!


磯貝は頭を押さえ、その場に崩れた。

内藤もその場に、泣き崩れた。


「うう…うううぅ…ぐすっ……」


「内藤…大丈夫か…?」

俺は内藤に近付いた。


「…うん…大丈夫。……うぅっ…。耕ちゃん……なんで?」

内藤は、うずくまっている磯貝に話しかけた。


「なんで…こんな事するの?…おかしいよ」


「…」

磯貝はうずくまったまま、何も答えなかった。


「さっきまでの耕ちゃんじゃないよ…。どうしちゃったの?」


「…ト…ルト…ベルト……」

磯貝は何度も小声でベルトと言っていた。


「…意味わかんない!あんたからもらったリング、返す!」

内藤は左手の薬指にはめていたリングを外すと、磯貝に投げつけた。


「…」
指輪は磯貝の体に当たると、落ちてその場に転がった。

内藤は、磯貝と付き合っていたんだ…。


「そんな人だと思わなかった。面白くて…優しい……人だと思ってたのに…。うっ……なんで…なんで……」

内藤はボロボロと泣き崩れてしまった。

俺は内藤に肩を貸すことしか出来なかった。