そうか。ゴミを取ってくれたのか。良かった。このまま何も無く終わって欲しい。
俺はその場から少し離れようと思った。


「ちょっと新商品でも見てこようかな……」


―その時、磯貝が俺の手を掴んだ。




振り返って磯貝の目を見たとき、目は昨日のように開き、強張った表情をしていた。


「…ベルトは…どうしたんだい…?」


いつもの磯貝とは違う声で、そう言った。

彼は…洗脳されている。その時、それを改めて確信した。


「磯貝…!」


「…今日は持ってないの…?」


「目を覚ませ!磯貝!」

俺の訴えも空しく、彼の耳には届かない。


「ベルトを…奪う……もしくは…殺す…」



「磯貝?」


コイツは磯貝じゃない!


「お、おい!やめろ!」



―ガタッ

磯貝は俺の首を掴み、事務所のドアを開け、俺の体を押し倒した。


「ぐっ!…んぐ……」

磯貝は俺の上に馬乗りになり、首を絞める。

苦しい!手を解こうとするが、凄い力でびくともしない!


そして、目の前が真っ白になった。


だが、意識はある。

奴が俺の顔にビニール袋をかぶせたんだ!

俺を…殺す気か…?

誰か…助けてくれないか?

誰か………。


―ガチャ

遠のく意識の中で、事務所のドアが開く音と、女の人の声が聞こえた。


「何やってんの…?」


女の声に、俺の首を押さえていた力は弱くなった。


「止めなさいよ!耕ちゃん!離して!」


誰だっけ……?この女の声は……。


「――ゲホッケホッ!ゲホッ!」

力が弱くなった奴の腕をなんとか払い、息を吸った。