俺は、走って鈴木を捜した。

まだそう遠くには行ってないはずだ。


近くの公園を見ると、ブランコに不釣合いな成年が座っていた。

180cmはある長身と髪型で、すぐにレッド鈴木だと分かった。


彼はどこかに電話をかけていた。

盗み聞きするつもりはなかったが、声が大きいから聞こえてくる。


「……マジありえねぇよ!大家みたいなジジイに追い出されてさー。せっかく帰ってきてやったのに、お前の部屋はねぇ!お前に食わせるメシはねぇ!みたいに言いやがって~。だから、今日も泊まっていい?お母さん怒らないかなぁ?」


「……うん。じゃあ行くわー。―日焼けパワー?もち、やってやんよ!んじゃねー」


レッドが電話を切ったところで、俺は近付いた。


「…鈴木君」


「あぁ、さっきの……クロロ軍曹だっけ?」


「クロザイルです」

この名前は不本意だけど。


「クロザイルって名前だから、タンニングしたほうがいいんじゃね?それじゃシロザイルじゃん。レッドのパワーで肌焼いてあげよっか?」


「いや、いいです」

俺が断ると、鈴木は立ち上がった。


「じゃ、俺行くからさ」


「ちょっと、待って!せっかくだから、少しだけ話さない?」


「……」


俺はなんとか鈴木の足を止めた。


―大人二人が、並んでブランコを緩く漕ぎながら、話した。


「……やっぱ?俺もそう思った!だってさ、俺も軽いギャグのつもりで骨盤ベルトを買ったんだ。それでナンパした時に、俺腰弱いんだよね~って見せてたら、ウケて!なんか携帯の赤外線が出てるのが体でわかるようになって。しかも日サロに行かなくても勝手に肌が焼けてくのがわかって、使えるな~って思ってたら桃子ちゃんに捕まった。それで世界を救えって。あり得ないっしょ!」


それを聞いた俺は、レッドも普通の人間の感覚だと知り、少し安心した。