最初に彼女を見たときの印象と、明らかに違って見えた。

人は見た目では判らず、奥が深い。


「こんな事件に巻き込んで、お金まで取られてしまって、なんとお詫びをしたらいいか…」

俺は彼女に頭を下げた。


「いえ、いいんです!アタシが勝手にお金を出したんだし…」


そんなやりとりをしている中、コンビニのドアが開いた。


入り口に立ち尽くす男は…磯貝だった。

磯貝は、さっきのコンビニ強盗犯の襟を掴み、引きずっていた。
犯人は殴られたのか、鼻を押さえ、戦意を喪失していた。


「…ハァ……捕まえた。コータ!警察呼んで」

「おう!」


やっぱり、磯貝は頼りになる。


警察に犯人の身柄を引渡し、事情聴取を受けた後、俺たちはバイトに戻った。


「―本当にありがとうございました」

キャバ嬢が俺たちに頭を下げ、お礼を言った。


「いえいえ」

「お客様の体が無事でなによりです」

こんな俺でも役に立ったのが、すごく嬉しい。

これもベルトのお陰か…。

「あの、お名前は…?」

キャバ嬢にそう訊かれたので、俺たちは名札を見せる。


「磯貝です!」「佐々木です!」


「磯貝さんと佐々木さんですね。ありがとうございました」


「お姉さんは?」
と、磯貝が訊いた。


「詩音です。…源氏名ですけど」
そう言って、キャバ嬢はニッコリと微笑んだ。

キャバ嬢の詩音(しおん)ちゃんは、さらに警察に事情を訊かれていた。今日の送りはパトカーになりそうだ。


一息ついてから、レジで磯貝が話しかけてきた。


「さっきの娘、いい娘だったな」

「ああ。今時のキャバ嬢って感じなのに、すごく丁寧で……一途で…」


「一途って?お前知ってんの?」
磯貝が不思議そうに訊いてくる。


「…ん?まあな」


「さては彼氏いるんですかー?なんて聞いてみたんだろ?」

「…まぁ。そんなところだ」

「カッカッカ。撃沈だな」


「…まぁな」
笑われても、俺は穏やかにそう返した。

彼女の彼氏に勝る存在なんて、そうそう出てこないだろう。

彼女の記憶に残ってる限り、彼は生きてるんだから。