そして着いた先には、真っ黒な外壁の、一軒家があった。

シックな黒なのだが、なぜか異様な雰囲気を醸し出している。

ルームシェアだと思っていた俺は、こう訊ねる。


「でけぇなぁ…。マンションじゃないんだ?」


「いいでしょ?三人だから広く使えるし」


「…そうだよね」

ハウスシェアか。この大きさなら、俺も一緒に住めるんじゃ…。
友達も可愛い娘だったら、是非シェアさせていただきたいってもんだ。

俺の妄想はどんどん膨らむが、玄関のドアは可愛い娘とは無縁のような厳つさだった。

彼女の後に続いて、玄関に入る。

普通の玄関なのだが、扉は鉄で、

「重っ」

とても重たかった。

中に入ると、暗い玄関には壺や、置物がいくつかあった。怪しい雰囲気が、さっきよりも出ている。

そこに小さめの虎のぬいぐるみもった。

「あ、これよく売ってるよね」

インテリア雑貨として売っているのをよく見かける。
ポンポンと頭を撫でると、

―ガルルル…

と言った。


「うわっ!?」

俺は怯んですぐに手を引っ込めた。


「本物だから気を付けて。手、ガブッていっちゃうよ」


俺はすぐに彼女の後ろに隠れた。

―80cmぐらいか?

小さめとはいっても虎だ。


「…飼ってるんですか?」


「うん」

ここは…動物園か?

それとも、サーカス小屋でもやってんのか?


「あたしも…狙われる立場だから、護身用にね」


やはり、彼女もベルトの秘密を握ってて、命を狙われているのか。

昨日の話は冗談半分だと思っていたのだが、一気に現実味を帯びてきた。

家でまったりとはいきそうにもない。俺の淡い期待は、玄関の重い扉を開けた時から、そんなに軽いものではないと否定されたようだった。