朝7時に目が覚めてしまった。

目覚ましは10時にセットしてある。


待ち合わせは13時。

3時間前に起きるのでも余裕なのに、これじゃ6時間もあるではないか。

二度寝したくても、寝付けない気がする。

よく眠れなかったのは、昨日の出来事があまりにも衝撃的過ぎたから。


―パチン

俺は両手で勢い良く頬っぺたを挟むと、部屋を出て浴室に向かった。

左頬がまだ少しジンジンする…。

朝シャワーでも浴びて、支度でもしよう。

「―何これ?」

部屋からダイニングに下りてきた姉の早苗が声をあげた。


「何って…弁当。暇だから親父と姉貴の分、作っておいたよ」

姉はテーブルにあった、俺の作った弁当を見て驚いている。


「弁当作ったって…熱でもあんの?」


「ねえよ」

時間があったのと、気持ちが高まっていたのはある。

彼女に対しての熱は……あるかもしれない。

「珍しいじゃん」


「いらないなら俺が食うけど?」


「味が怖いけど、持ってく。サンキュー」


「…一言余計だよ」

姉は俺の弁当を持って仕事に向かった。
元ヤンだった姉は、今はエステティシャンをしている。

根性焼きや刺青を入れなかったのが、エステティシャンという道を彼女に与えたんだろう。

親父は特別養護老人ホームで介護をしている。

その親父は、

「サンキュー」
と、俺に一言だけ言って仕事に出かけた。

姉のように口数は多くない。