その彼女の笑顔があまりにも可愛かったから、追い打ちをかけてしまった。


「コーヒーでも飲まないっすか?おごりますけど」


「え?」

少し戸惑って、考えた様子の彼女は、もう一度微笑んでくれた。


「……じゃあ、もらおうかな」


俺はコンビニで彼女にホットの缶コーヒーをご馳走した。

コンビニの前で座って飲むが、会話は弾まない。


訊けないことが多いせいもあった。

当たり障りのない会話を探した。


「一人暮らしなんですか?」

これしか出て来なかった。

「いや、シェアしてて、三人…」


「三人暮らしなんですかー?楽しそう」

一人暮らしじゃないことに、なぜか俺は残念な気持ちになる。
なぜかって?
明日のことを期待してたからに決まってる。


「本当はもう一人いたんだけどね、出ていっちゃった…」


「……」

何だか悲しそうな顔をした彼女に、俺は声をかけてあげれなかった。

「あ…なんかゴメンね」


「いや、俺のほうこそ変な事聞いてすいません」


「じゃあ、明日ね。ご馳走様」


「あっ!一人で大丈夫ですか?」

立ち上がる彼女に、声をかける。
時計は夜の11時を回っていた。
女の子の独り歩きは危険だろう。


「大丈夫。近いし。それに…」

彼女が俺の顔を見つめる。

「…送り狼のほうが怖いし」


「なに言ってんすかー!」

…するわけないじゃないか。


「じゃあね」


「また明日」


だって、

左頬がまだジンジンするもの。

「あっ!名前聞いてもいいですか?」


「―桃子!」


あんなに強い赤ずきんを襲う勇気はないよ。

あ…桃ずきんか。



だって、俺



気がちっちゃいし。