「それで、鈴木が同意してくれて、一緒に住むことになったのよ」

桃子さんの話を聞いた俺は、深い呼吸をした。
ことの始まりの話を聞いていて、二人の酔いはすっかり醒めていた。

「そうだったんですか…」

桃子さんが最初からバリバリの正義感だったわけじゃなくて、人間らしい弱い部分があったのを聞けて、少し安心していた自分がいた。


「桃子さんも…最初は不安だったんだね」

「もちろん。何も知らない赤の他人の話を信じて、一緒に住むなんて…ありえないよね。今考えると…バカみたい。でも、その時すごく病んでたから、一生懸命なハカセがすごく光って見えて…あ、頭じゃないよ。頭も光ってるけどね、行き方も光ってるから、夢のある話を信じちゃったのかも」

「そっか…桃子さんがこの話に乗らなきゃ、俺らは出会ってないし、ガウレンジャーが機能してないんだよね…きっと」

「だから、ハカセはすごいんだと思うよ。みんなをやる気にさせてるんだから」

「…そう言えば、涼平がここに来たのは、その後のことなんだよね?どんなきっかけだったの?」


「涼平?ああ、涼平はニュースに出てたの」

「ニュース?」

「夕方のニュースに出ててね。秋葉原に手からクリームを出す少年が手品をしているって騒がれて、日本のサイババか!?なんてマスコミに言われてたの。そのテレビをたまたまハカセが見てて、コイツだ!って叫んだのよ」

「へぇ…。涼平は手からもクリームが出せるの?」

「いや、周りのオタク達が手から出すって騒いでて、でも実際はベルトからだったってオチ。すぐにあたし達は秋葉原に向かったんだけど、ちょうど警察の路上パフォーマンスの規制が厳しくなって、涼平を見つけづらかったけどね。インターネットの掲示板の情報から、ネットカフェで暮らしているのを見つけて確保したわ」

「そうなんですか…。てか、涼平との出会いはそんな簡単な説明でいいの?」

「いいんじゃない?涼平だし」


「…そうだね」

二人は氷が溶けて薄くなったブランデーを口に入れた。