しばらくして、碧が足早に席に戻ってくると、ハカセにこう言った。


「…桃子と一番仲が良かったコに聞いたんです!そしたら…川越のキャバクラで今働いてるって…!」


「ほ、本当か!お店の名前は?」


「ジュエルってお店ですって」


「ジュエルか…わかった。ありがとう」


そう言ってハカセは立ち上がった。


「もう、行っちゃうんです…か?」


「ああ」


「もう少しゆっくりして行けばいいのに…」
と、碧が言うと、ハカセはグラスに入っていた焼酎を一気に飲み干して、こう言った。



「ゆっくりもしてられないんだよ」


「…残念です。お見送りしますね」


碧は入り口までハカセを見送った。


「桃子ちゃんと会えることを祈ってます」


「ああ。キャバクラは好きじゃないが、君の作ったお酒は…美味しかったよ」


そう言ったハカセの表情は、キャバクラに来て初めての笑顔だった。