翌週、ハカセは生活費を削って、再びキャバクラへ訪れた。


「碧ちゃんはいるかな?」


「碧ちゃんご指名ですね。ありがとうございます。どうぞこちらに…」


ボーイに案内されて席に着く。

少しして碧がハカセの隣に座った。


「あ、また来てくれたんですね~!嬉しい!ってあたし目当てじゃないかぁ~」


「そうだ。君が目当てじゃない」

この頃のハカセは、地球に来てまだ短いのもあって、会話が淡白だった。


「言いますねぇ~。日本の方じゃないんでしたっけ?」


「そうだ。別の…国だ」


「モンゴルとかそっちっぽい顔してますよね。日本に近いけど」


碧に笑顔でそう言われても、ハカセは素っ気無い態度でこう返す。


「そんなことより、桃子って娘はどうだった?どこにいるって?」


「それが…繋がらなかったんですよ。電話しても出なかったんです…」


「出ない…?」


「うん。出なかった…忙しかったのかなぁ?またかけてみるね。だから、来週までにはなんとかアポ取ってみるから…」
と、碧が言ったところで、ハカセが急に怒りを口に出した。


「わしは…お前なんかのためにココに来てるんじゃないんだ!連絡が取れないなら、もう来ないよ!」


ハカセの言った言葉に、碧は怯んだが、小さな声でこう言った。


「…それは確かにそうです。私が悪いんです。…けど、日本では、思ってても口に出さない…人をいたわる気持ちというのもあるんですよ…」


そう言うと碧は立ち上がり、ハカセに軽くお辞儀をした。


「待ってて下さい。桃子と仲良かったコ達に聞いてきますから」


そう言って店の奥に向かう碧は、涙を手で拭っているようだった。