「きゃっ!」

その女性の悲鳴で意識を戻す。


「あっ!すいません」

これには訳が…。

しかも離れねぇ!

やべっ!

ベルトを剥がそうとするが、剥がれない。

傍から見たら、ケツを触ってるようにしか見えない。


「痴漢だっ!」

一人の男性客が俺を指で指す。


「えっ?」

ちょっと待ってくれよ。

「あぁっ」
「ホントだ…」
「痴漢だ」

他の客達も俺に注目する。

違うんだってば!

あ、手を離せばいいのか!
相変わらず、俺って気付くのが遅い。

俺は手を離すと、両手を上げた。


「ほ、ほら!このベルトが磁石で!勝手にくっついて…」


俺の必死の弁解も誰も信じてくれないだろう。


だって、俺が手を離したら、ベルトはすぐに彼女の腰から落ちたから。


《18OVER》と書かれた暖簾の中から、男達が出て来て俺を囲んだ。


騒ぎを聞きつけたんだろう。

「痴漢だ!」

「捕まえろ!」

「店員さん110番!」

「はい!」

客達と店員の対応は早かった。



そして、俺は三人の男達に取り押さえられた。


「俺はやってないって!」

必死でもがくが、大人三人の力は強い。

くそっ…!
あのベルトを持ってから散々だ!

だって……こうなったのも、あのベルトのせいじゃん。


それでも
俺は
やってない

とは言えないな…。

ケツ触っちゃったもんな…。

むぎゅって。

しかし、こいつらもやけに正義感があるな。


このピンクを着た女の子が可愛いからか…?




「―痴漢かよ…終わってるな。死ねばいいのに」

会社員らしきおっさんが、店員とカウンターで話しているのが聞こえてきた。

その会社員は、羽交い絞めにされている俺のほうをチラチラと見て、ニヤニヤしている。

あいつも暖簾(アダルトコーナー)から出て来たよな?