時刻は午前1時。

美女は今夜も眠れない。

「あーあー。
子守唄とかって効果あるかな〜。」

『私、歌なら自信あります!』

美しく響く男性の声に、美女は
かわい子ぶる。

「だぁれ♡」

姿を現したのは、

「きゃっ、イケメン♡」

そう。今回、待ちに待ったイケメンである。紳士的な面持ちだ。

『ははは、それはありがとう。

私は、サムだ。
それじゃあ、1曲。』

「楽しみだわ。」

月明かりに照らされ、2人は
とても画になる。
サムは、
すぅ、と息を吸った。

『ねぇ〜むぅれ〜、
ねえーむれぇー、
良い子や〜寝んねしぃ〜なぁ〜♪』

「ストップ!
辞めて、気持ちわどぅくだっでぎだー。
あんた、自分が思ってる以上に
移ろいやすい音程だよ?

あたし絶対音感あっから、
あんたみたいなド下手、マジ
吐き気すんだよね。」

『あんだとおらぁ?
ケンカ売っとんのか小娘があ!』

「わーん、こわぁい。
ねぇ、付き合ってあげるからぁ、
許して♡」

『えー、やった!
じゃ。許す♡』

「あん?テメェひっかかりやがったな?
テメエのような性格ブスと
付き合うかってんだこんのやろぉ。」

『あー?誰が性格ブスだぁ?
テメエの方が性格ブスだろうがあ!』

「テメェのような
オンチやろおにはパンチがお似合いだあ!」

バキッ

『ぐっほ、げほ、げほ、

テメエなにしやが…』

ドカッ
「おおーい、まだ終わってねぇ〜んだよ
この野郎、次はその顔にパンチしてやろうか?」

『ひぃーん、顔だけは、
顔だけは〜』

サムは、去った。

「けっ!ひぃーん、だって?
馬か、このやろぉ!

テメェはその顔がなけりゃあ
歌が下手な性格ブスのただの
凡人だもんなあ!

一昨日来やがれ!」


美女は今夜も眠れない。