「健人はピッチャーだからさ、川崎くんが野球部にはいれば、いいバッテリーになるんじゃない?」
川崎くんは、ちょっと切なそうな目をしてから、またいつもの真顔に近い表情に戻る。
「もう、野球できないし。」
「…え?」
「俺さ、右腕痛めちゃってさ、俺キャッチャーだったし、できなくなっちゃって。」
右腕の肘のところを左手で握った。
「そう…なんだ。もう、治らないの?」
「治ってるんだ…けど、もう球を投げれる勇気がないんだ。」
投げるフリをする川崎くん。
「そっかあ…。なんか、ごめんね?でも、私、川崎くんが野球してるとこ見たいな。」
図々しかったかな?と後悔しながらも、川崎くんの表情を伺う。
「うん、やってみようかな。」
川崎くんは、優しい笑顔を向けてくれた。
こんな顔するんだ…。

