引越した先に、ラーメン屋と、なかなか美味しいケーキ屋が並んでいた。

ラーメン屋は普通の屋号だったが、ケーキ屋は「タクマ」という屋号だった。

話によると、店の主人の父親だか誰かの名前を取ったとか聞いていたが、アニメオタクとしては、心情をくすぐる屋号である。

電話で話しをしたトキさんと、大いに盛り上がり、恥ずかしい話だが、お店にあるアニメキャラのイラストを描いてプレゼントした。

店主は快く受け取り、しばらくお店に飾っておいてくれた。

本当にいい人だと、今でも思う。

そのアニメキャラというのが、中学2年くらいに放映していた、東映動画の「惑星ロボ ダンガードA」というロボットアニメの主人公、「一文字タクマ」である。

タクマ繋がりというだけで、なんとも恥ずかしい事なのだが、こなれてない高校生がやることだと大目にみてくれていたのかも知れない。

このケーキ屋は何年かして、青山に出店したらしいと噂があり、田舎の町を去っていった。

別に私らが嫌で引越したわけではあるまいが(爆)、店主の実力から考えると、田舎町より、青山のような洒落た町のほうが将来はよいのかもしれない。

ただ、この店主の経営する店が、現存するのか、屋号はどうなっているのか、今はわからない。


さて、ケーキ屋の隣のラーメン屋は、焼き餃子が美味しかった。

主に、家まで出前して貰う事が、多かったが何度か親と、食べに行った事がある。

近所、その頃、何処でもマンション建設をしていたところが、多かったので、工事関係の方が食べに来られていたのが大半だった、普通のラーメン屋である。

ただ、一つ、普通でなかったのは、その経営者のご長男は「オタク」だったのである。

店に何気に飾ってある、額入りの絵は「タイガーマスク」だった。

彼は私より、4つくらい上であったが、アニメ製作にも関わった事があるというだけあって、画力はプロ並である。

ところが、職業はラーメン屋さんなのである。

オタクの女子高生には、もの凄く不思議に見えた。

ある日、出前を下げにききた彼は、ケーキ屋に飾ってある一文字タクマは君が描いたのかと私に聞いてきた。

その時は得意気に答えていたが、彼の才能を知った時は、顔から火が出る思いだった。