「誰であろうとこれ以上、日記で殺すのは嫌や」

「そんな事、言ってる場合ちゃうやろ?殺されそうなんや」

「わかってるけど……」

沈黙が走る。

「どうしたらええんや…」

麗菜はそう呟きながら頭を抱えると、俯いた。

「それしか、ないな…」

突然、誠が呟く。

「え?それって?」

「お前が言うた、できるだけ具体的にスリーの事を書いて、呼び出す」

「呼び出して、どうするんや?」

「日記帳を没収する」

「…呼び出しに、失敗したら?」

「でも、スリーが何者かわからん以上、そうするしかない」

「そうやけど…でもどうやって、呼び出すんや?」

「千里ちゃんの情報によると、相手は相当するどいらしい。この会話だって、聞かれてるかもしれん」

「え!」

麗菜は辺りをキョロキョロする。

「誰も、おらんぞ?」

「そうや。誰も、おらん」

「は?何言ってんねん、お前?」

「昨日、ここで、千里ちゃんとスリーについて話したんや」

「え?」

「そのときは、スリーに聞かれてたんや。どうやって聞いてるかは、わからん」

「……」

「やから、今はその方法は言われへん。バレたら、終わりや」

誠は立ち上がると、自転車にまたがった。

「麗菜、ありがとう。お前に話したら、だいぶ気が楽になったわ」

そう言って誠は、麗菜に笑顔を見せた。

「もし、他にいい方法思いついたら、電話してや」

そう言うと、誠は自転車を漕ぎ出した。それを見送る麗菜。

「誠!」

「あ?」

麗菜の呼ぶ声に、誠は振り返った。

「…死ぬなよ」

「俺が死ぬかい、アホ」