「どうやら俺の勝ちやな、千里ちゃん」

 千里は体育館を出ようと、走り出した。

「おっと。どこ行くん?」

その行く手を、麗菜が阻んだ。

「……」

千里は観念したのか、その場にヘタッと座り込んだ。

「千里ちゃん……確かに、俺も悪かった。……ゴメンな……」

何も言わず、床を見つめる千里。

「でも、一つだけ聞きたいことがある。千里ちゃんは、俺に日記の事を話した。それは、ルール破りとちゃうんか?なんで、なんともないんや?」

誠の質問に、千里は黙りこくっている。

「……まぁ、ええわ」

誠は千里が持っている日記帳を取り上げると、体育館の出口に向かった。

「おい誠、行くんか?こいつ、放っといてええんか?」

麗菜が言った。

「ええんちゃうか?日記帳も没収したし。もう悪さ出来へんやろ」

「待って」

そのとき、千里は誠を呼び止めた。

「それ、とられちゃうと……私、どうなるか……」

誠は少し微笑むと、自分の日記の1ページを千里に見せた。




9月13日 予想日記
三富千里は、日記に関する記憶を全て失う。そして、日記を書いていたという事実がなくなった。