「……そうだよね。こんな地味で眼鏡かけてる女なんかより、あっちのイケイケの方がいいよね……」

「違う、違う!今日はホンマに先約やったから……」

千里は誠が言葉を言い終わる前に、教室を出た。

「ちょ、ちょっと、千里ちゃん!」

誠は追うように教室から出たが、そこにはもう千里の姿は無かった。

「あぁぁ……言い過ぎたなぁ…後で謝ろう……。でも千里ちゃん、いきなりどうしたんやろう……」

誠が教室に戻ろうとしたとき、後ろから声がした。

「おう、誠」

「お、田島」

そこには田島が立っていた。

「誠、ホンマにごめんな。これ、お前から盗った金。助かったわ。ありがとう」

田島はお金を誠に差し出した。

「いらんよ、金はやる」

「え?」

「どうせ俺が金なんか持っとっても、しょーもないことにしか使わんからな」

「でも…」

「お前の家、借金で大変なんやろ?ええよ」

誠は差し出されたお金を取ると、田島の胸元のポケットに差し込んだ。

「誠…ありがとう。あ、そう言えば、さっき三富千里が悲しい顔して走って行ったけど、お前らケンカでもしたんか?」

「え?千里ちゃん知ってるん?」

「アホ、去年一緒のクラスやったやんけ。覚えてないんか?」