誠はそう言うと、友美を残して中庭を出た。校舎に入ると、屋上に向かった。誠の学校は、生徒も屋上にいけるようになっている。屋上に行くと、フェンスに両肘を乗せて遠くの景色を飽きるまで眺めた。誠が教室に戻る頃には、一時間目の授業が終わっていた。

「誠君、どこ行ってたの?」

教室に戻るとすぐ、千里が話し掛けてきた。

「なんかだるいから、ちょっとブラブラしてたねん」

「そうなんだ。……誠君、さっき中庭で会ってた人って……誰?」

「え?あぁ、友美ちゃんのことか。見てたん?あれは、ただの後輩やで」

「そっか。あ、誠君、今日って暇?」

「うん、暇やで。何で?」

「おいしいパスタのお店見つけたから、帰りに行かない?」

「うん……あ!あかんわ!今日は先約があった……また明日でもええ?」

「…先約って?」

「さっきの中庭の女の子に、今日一緒に帰ろうって言われとって」

「……ふーん、私より、あの女をとるんだ」

「いや、そう言う意味じゃなくて、あっちが先約やから」

「だから、あっちをとるんでしょ?」

「いや、そうじゃなくて…」

「あっちをとるには変わりないでしょ?」

「……何でそんな言い方するん?」

「だって、ホントのことじゃん」

「お前、何様やねん?彼女でもないのに偉そうに言うなや!」

「……」

誠はハッと我に返った。

「あ、ごめん、千里ちゃん…言い過ぎた……そんなつもりじゃ……」