「すまん、すまん。そう怒鳴るなや、誠」

誠と麗菜は席についた。窓側の一番後ろの席で、誠が右、麗菜が左の隣同士だ。

「だいたい、喧嘩売ってきたのはお前やんけ、誠」

「あ?」

再び麗菜の胸ぐらをとった。

「あ?何や、この手は?やるんか?」

「…お前とおったら、なんでこう喧嘩になるんやろうな。恥ずかしいわ。高3にもなって」

と、麗菜を突き放した。

「痛いなぁ、もっと優しく放せ」

「お前、俺の話聞いとるか?」

「まぁ、楽しかったらええんとちゃう?シャレやん」

「楽しくないわ!」

誠は麗菜の頭をパシッと叩いた。

「痛!」

「とにかく、俺はもうお前とアホな喧嘩せぇへんからな。次見つかったら、ホンマに退学やねんで。ちゃんと高校卒業して、大学行く」

「お前みたいなダラダラ生きてる奴が、急に勉強なんか出来るんか?お前、通知表どんな感じ?」

「いけるて、通知表なんか関係無い!」

「アホか、通知表も点になるんやで」

「わかっとるわ!でも筆記試験でめちゃめちゃええ点数採ったら、文句ないんやろ?」

「そんなこと、出来ると思てるんか?」

「おう!」

「本気なん?」

「おう!本気や!」

麗菜を真っ直ぐ見る誠。

「しゃーないなぁ。ほんなら、頑張れや。俺の兄貴が使ってた参考書、お前にあげるわ」

「マジで?ありがとう!でも、マジでダラダラ癖治すのは難しそうやなぁ…」

「あ!ほんならお前、日記書くっちゅーのはどうや?」

「は?何や、急に?」

「親父に聞いたことあるんや。日記書いてたら生活のやり方、変わるらしいで。自分の1日のしたこと書いてたら、あかんとことかすぐ見つけられるらしい。毎日ダラダラ生活してるの書いとったら、勉強せなあかんわぁって危機感感じてやるようになるんちゃう?」

「えぇー、それホンマなん?」