「何や?」

「俺の誕生日を答えろ。その『イヤホン』を、付けずに」

「え?」

慌てるおじいさん。

「どうしたんや?麗菜やったら、わかるはずちゃうんか?」

「え…それは……」

その瞬間、おじいさんの胸ぐらをつかみ上げる誠。

「答えろ。『麗菜』は、どこや?」

「おいおい、誠…俺が、麗菜や」

「もう、バレとんねん」

そのとき、おじいさんの襟に小さな黒くて丸いスピーカーのような物が付いていることに気づく。それを手に取る誠。

「受信機か…」

それを地面に叩きつけると、誠は空に向かって叫んだ。

「麗菜!出て来い!」

キョロキョロと辺りを見渡す誠。しかし、人影は無い。そのとき、おじいさんがイヤホンを誠に差し出した。

「…何や?」

「……」

無言で、ただイヤホンを差し出すおじいさん。誠は、それをゆっくりと耳につけた。

「……」

「……」

しばらく、無言が続く。そのときだった。

「誠」

イヤホンから、誠へ呼びかける声が聞こえた。それは間違いなく、麗菜の声だった。

「麗菜…お前、どういうつもりや…」

怒りに満ちた声で言う誠。

「ようわかったな。今から、前にお前と行った公園に、来い」

誠はその声と同時にイヤホンを外すと、走って公園へ向かった。