「…誠?」

「麗菜。これ…」

と、誠は天津飯を麗菜に差し出した。

「…これは?」

「晩ご飯や。お前、何も食べてないんやろ?」

「ごめんな、なんか」

「俺が謝りたいわ。お前を、こんな目に合わせて…」

「だから、もうその話はええって言うてるやろ」

麗菜は天津飯を受け取ると、さっそく食べた。

「うまい」

ガツガツと食べる麗菜。その姿を見て、涙が出そうになる誠。

「くそ…」

取り返しのつかない麗菜の姿に思わず、声が出てしまう誠。

「サンキュー。腹、いっぱいになったわ」

麗菜はそう言うと、誠に皿を渡した。

「お前のお母さん、わざわざ俺の分まで作ってくれたんか?」

麗菜が聞く。その言葉に、ドキリとする誠。

「…まぁ……な」

本当の事を言うと、また麗菜は怒るだろう。誠はそう返事をして、適当にごまかした。

「ほな、また明日な。ご飯、ありがとう。お母さんに、そう言うといて」

麗菜は誠にそう言った。

「え?まだ、ここにおったらあかんのか?」

誠が聞く。

「アホ。早よ、帰らんかい」

「なんでや?」

「今は、気分的に一人でおりたいんや」

「そっか…」

誠は麗菜に背を向けると、トボトボと家へ帰った。玄関を開けると、靴を脱いだ。

「ただいまー」