先生がそう言うと、えぇー!と言う生徒の声がいっせいにあがった。だが、誠だけは違った。

「…は?」

誠はそう声を漏らすと、ただ唖然と口を開けた。

「ん?南原、何や?どうした?」

誠に気付いた先生が言う。

「あ、いや、なんでもないです…」

誠はそう言うと、平静を装った。

……あれ?なんでや?昨日、日記に殺人事件が起きるって書いた…しかも、十人…朝だって、日記に書いた通り7時に起きた。何これ?たまたま?こんな的中するか普通?この後は…確か、パチンコで新台の『うどん天国』を打って、五万勝つ…まさか…いや、偶然やんなこれ…

結局、麗菜はその日、誠が日記に書いたように学校へ来なかった。学校が終わると、誠は何かにとり憑かれたようにパチンコ屋に向かおうと決意した。

校舎を出ると、自転車に乗って、まずは私服に着替えるために真っ直ぐ家に帰った。家の扉を開けると、「おかえり」と言う秋子を無視して、サッと2階に上がった。部屋に入ると制服を脱ぎ、私服に着替えた。

Tシャツにジーンズというラフな格好で家を出た誠は、再び自転車に乗ると線路沿いを学校と反対方向に走った。

自転車に乗っているときも、誠の頭の中はまさかとは思うがこれが偶然かどうかで、ずっとモヤモヤしていた。

街の商店街を抜けると、パチンコ屋が見えてきた。青い看板が派手にライティングされていて、『でるパチンコ』と書いている。もっとマシな名前を考えられなかったのかと思ったが、今はそんなことを考えている場合ではなかった。