「…え?」

二度目の呼びかけに、はっきりした。それは、間違いなくそのおじいさんに呼ばれたものだった。ゆっくりと視線をおじいさんに向ける誠。

「…なんで、俺の事を?」

そう尋ねる誠。

「俺や」

おじいさんから発せられた声。そのとき、鳥肌が全身を駆け抜けた。嫌な、予感がした。

「え…誰?」

恐る恐る聞く誠。




「俺や…麗菜や」




その声に、ゆっくりと首を左右に振って絶望する誠。

「そんな…冗談やろ?」

そう言った誠は、もはや冗談だとは思っていなかった。

……麗菜が、昨日公園で追い詰められてた理由……助けてくれた、方法……

それに関係がある。誠の直感は、的中した。

「ちゃう。信じてくれ、誠。俺や」

「何でや!何があったんや、麗菜!」

この状況で、おじいさんが麗菜と言い張る。それはもう、誠を助ける為に受けた何かだとしか考えられなかった。

「麗菜!」

おじいさんになった麗菜の体を起こし、揺さ振る誠。

「よかった。信じてくれたみたいやな」

麗菜は重そうな体をゆっくりと動かし、背中に敷いていた日記帳を手に取った。

「それ……友美ちゃんの、日記帳?」

その誠の言葉に、コクッと頷く麗菜。麗菜は日記帳の、ある1ページを開いた。

「……え?」

そこに書かれた文字に、誠は涙が溢れた。