今日もいつもと同じ景色が広がる。学校に着くと自転車を駐輪場に停め、校舎に向かった。教室に入ると、麗菜の姿はまだ無かった。あいつは、どうせ遅刻ってとこか…

「おはよー、誠君」

席に着くと、千里が話しかけて来た。

「お、千里ちゃん!昨日はありがとう」

「いいよ。誠君、今日は早いんだね」

「うん、なんか早く目ぇ覚めてもうてさぁ…暇やし、早よ学校来た」

「そっか。あ、次の日の日記も書いた?」

「書いたで!でも、何の意味があるん?」

「すぐにわかるよ。絶対秘密だよ」

「お、おぅ…」

そのとき、先生が教室に入って来た。千里は誠に「じゃあまたね」と笑顔で言うと、席に着いた。誠は千里の言った言葉の意味が全くわからなかった。ただし、このときは……

「じゃあ、今から出席をとるからなー。全員席に着いたな?…ん?」

先生は角刈りの髪をワシワシと掻きながら、麗菜の席をじっと見ている。

「先生、麗菜来てない」

誠が言った。

「そうか。遅刻か?」

「わからん。また聞いときます」

「よし。じゃあ授業を始める。…と、その前に、1つだけ。今朝ニュース見た人?」

先生がそう言うが、生徒は誰1人手をあげなかった。どうしたの?という顔で、皆がお互いを見合っている。

「やっぱり、登校時間より後のニュースやったか。では伝えておきます。昨夜、殺人事件が起きました。それも、十人連続殺人。大阪市内でや。前代見聞の大量殺人や。犯人はまだ逃走中やから、気をつけるように」