「あ、私の方便は少し変だよ。高校入学と同時に大阪に来たから、こっちに住んでる間に標準語と大阪弁と、いろいろ混じっちゃった」

「あ、そっか。でも、何か可愛いよ」

「ほんとに?ありがとう」

そんな事を話している間に、五分程で文具店に着いた。文具店は古く、今にも潰れそうな感じだった。赤く霞んだ屋根には、蜘蛛の巣がいくつも張ってある。

「…ホンマにここに、ええ感じの日記帳なんかあるん?」

不気味そうに聞く誠。

「意外に、あるよ」

そう言って千里は文具店に入った。誠も千里に続いた。店内も古く、壁は飾り気が無くひび割れていて、ノート、消しゴム、シャープペンシル、ルーズリーフなどの文房具が適当に並んでいた。

「これだよ」

千里は茶色の棚から少し分厚い茶色の日記帳を手に取り、誠に差し出した。

「これだと凄く書きやすいよ。私も、これ使ってるの」

「そうなん?ほな、これにするわ!」

誠は笑顔で言った。

「うん」

千里も笑顔で答えると、日記帳を広げて丁寧に説明した。

「ここは飛ばして…それで、ここに書くの。わかった?」

「おう、だいたい!」

誠は日記帳を閉じると、レジへ向かった。値段は千円と高かったが、勉強のためだと、我慢した。

「あ…、誠君になら教えてあげてもいいかな…」

誠がレジから返って来ると、千里は急に真剣な顔で言った。

「え?何?どうしたん?」

「絶対秘密だよ」